忍者ブログ

君と1000年紡ぐ

甘くもなく、でも辛口でもない。 そんな物語を置いています。
[19]  [17]  [16]  [15]  [14]  [11]  [10]  [7]  [6]  [3]  [5

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

雲を運ぶ人の話

男が雲を乾燥させて、
小さな瓶に詰め持ち歩いています。

彼は、それを別の場所で、
水に溶かして土へ撒くのだそうです。


乾燥雲は土の命を吸って舞いあがり、

やがてふたたび雲として、

雲を生きます。


男は、そういう実験をしている人でした。

世界を救うに値する、壮大でとても素敵な実験でした。

土砂崩れに悩まされる村と、
豪雪に耐えている母と、
枯渇している砂漠を、
同時に救うことができるので。

しかし、
男は実験に必要なものが、足りませんでした。

彼は、女というものを理解できていなかったのです。

女は大地。
雨を受け止める大地。
雲の影を拾い、温かく微笑む存在。
土は女そのものであったのです。

すなわち、男の実験は、
未だ成功にはいたっていなかったのです。

瓶の中で、乾いた雲の欠片は、カラコロと小さく鳴いています。
母を欲する赤子の悲鳴に聞こえます。

男は試しに、足元の土へ欠片を撒いてみました。

雲はひゃっと言って、消えてしまいました。

幼い手の跡をのこして。

男は雲を小さな瓶に詰めています。
世に出れば、きっと多くの他人が尊敬し、彼に援助を申し出るだろう大実験のために。

けれども、男は途方にくれていました。

PR
Submit Comment
name
title
color
mail
URL
comment
password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
HN:
史間
性別:
女性
職業:
編集
趣味:
物書きと妄想
自己紹介:
本館「史間ブログ」では小説を連載しています。
★このブログに掲載されている内容の著作権は、すべて管理人に帰属します。無断での転用を禁止します。どうしても引用が必要な際はご相談&ご一報ください。
忍者ブログ [PR]
Template by repe