君と1000年紡ぐ
甘くもなく、でも辛口でもない。
そんな物語を置いています。
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
レンネンカンプ博士の誘拐
そこのあなた。
ええ、あなたです。
あなた、もしや、レンネンカンプ博士がどこへ行かれたか、ご存知なのではないですか。
ええ、あのレンネンカンプ博士です。
そうです、世界的に有名な土の博士です。
先月の学会で「生涯を土の研究のよろこびにささげる」と、堂々と宣言なさいまして。
それは衝撃的でした。
会場中がしん…と、こう、水を打ったようにとはこういうことなのですね、静まり返りまして。
研究対象にすべてを投げ打つことが、なにが悪いのか、とおっしゃいました?
いえいえ。
なにごとも、やりすぎることはよくありません。
ほどよく、テキトーといいますか、適当な姿勢が必要なのではないでしょうか。
研究者の立場というものは、とくにそうだと思います。
ああ、話がそれました。
わたしは博士がどうにも気がかりで、ここまでやって来たわけです。
なにせ学会で熱弁された博士の顔ときたら、ひどい土気色で。
われながら上手いことを申し上げました。
お笑いになれない。
これは失礼いたしました。
とにかく、彼のやせ衰えようときたら、いまにも風に吹かれて木っ端みじんに……これはまた失礼いたしました。
簡潔に繰り返しますと、心配なのです。
土にささげるとは。
どうしてそんな、一人身に負えないことを。
母なる大地を覆うもの。
あらゆるものを生み出し、混ぜ合わせ、ふたたび迎え入れるもの。
それを救いたいとおっしゃっておいででした。
博士は。
ここにいらっしゃると思ったのですが。
この星には、土しかないでしょう。
つまり、最初と最後だけがある。
この星には。
還元すべき、循環されるべきものが存在しないのです。
草花も育ちません。
おそらく博士はいろいろ与えてはみたのでしょうね。草木の苗やら、昆虫やら、水やら。
それでも、お一人でやられるのには限界があったのでしょう。
こんな端っこの小さな星では。
その証拠に、ここには相変わらず土しかない。
ではこれ以上、博士はなにをささげるとおっしゃったのか。
わたしはそれこそが。
彼が生涯、と言ったことの真意だと思ったのです。
もう、彼にはすでに、あなたがたに差し上げるものがなくなっていたのですね。
では、もう彼はこの星の一部になってしまったのですね。
しかしそれが気休めにしかならないことを、彼も気づいていたでしょうに。
この星はもう循環しません。
土しかないのですから。
わたしですか?
わたしはなにもしませんよ。
研究者として、この星が融解していく様子を観察させていただきます。
適当に、ですがね。
ええ、あなたです。
あなた、もしや、レンネンカンプ博士がどこへ行かれたか、ご存知なのではないですか。
ええ、あのレンネンカンプ博士です。
そうです、世界的に有名な土の博士です。
先月の学会で「生涯を土の研究のよろこびにささげる」と、堂々と宣言なさいまして。
それは衝撃的でした。
会場中がしん…と、こう、水を打ったようにとはこういうことなのですね、静まり返りまして。
研究対象にすべてを投げ打つことが、なにが悪いのか、とおっしゃいました?
いえいえ。
なにごとも、やりすぎることはよくありません。
ほどよく、テキトーといいますか、適当な姿勢が必要なのではないでしょうか。
研究者の立場というものは、とくにそうだと思います。
ああ、話がそれました。
わたしは博士がどうにも気がかりで、ここまでやって来たわけです。
なにせ学会で熱弁された博士の顔ときたら、ひどい土気色で。
われながら上手いことを申し上げました。
お笑いになれない。
これは失礼いたしました。
とにかく、彼のやせ衰えようときたら、いまにも風に吹かれて木っ端みじんに……これはまた失礼いたしました。
簡潔に繰り返しますと、心配なのです。
土にささげるとは。
どうしてそんな、一人身に負えないことを。
母なる大地を覆うもの。
あらゆるものを生み出し、混ぜ合わせ、ふたたび迎え入れるもの。
それを救いたいとおっしゃっておいででした。
博士は。
ここにいらっしゃると思ったのですが。
この星には、土しかないでしょう。
つまり、最初と最後だけがある。
この星には。
還元すべき、循環されるべきものが存在しないのです。
草花も育ちません。
おそらく博士はいろいろ与えてはみたのでしょうね。草木の苗やら、昆虫やら、水やら。
それでも、お一人でやられるのには限界があったのでしょう。
こんな端っこの小さな星では。
その証拠に、ここには相変わらず土しかない。
ではこれ以上、博士はなにをささげるとおっしゃったのか。
わたしはそれこそが。
彼が生涯、と言ったことの真意だと思ったのです。
もう、彼にはすでに、あなたがたに差し上げるものがなくなっていたのですね。
では、もう彼はこの星の一部になってしまったのですね。
しかしそれが気休めにしかならないことを、彼も気づいていたでしょうに。
この星はもう循環しません。
土しかないのですから。
わたしですか?
わたしはなにもしませんよ。
研究者として、この星が融解していく様子を観察させていただきます。
適当に、ですがね。
PR
Submit Comment
HN:
史間
性別:
女性
職業:
編集
趣味:
物書きと妄想
自己紹介:
本館「史間ブログ」では小説を連載しています。
[01/17 ViktorianFrimi]
[09/04 史間]
[09/02 kayana]
[05/17 史間]
[05/15 kayana]
★このブログに掲載されている内容の著作権は、すべて管理人に帰属します。無断での転用を禁止します。どうしても引用が必要な際はご相談&ご一報ください。